検 証
「大村は堅い」「戸田は荒れる」と言われます。
10年分の払戻を、1日も欠かさず数えた記録です。
場の名前が出るとき、たいてい一緒に付いてくる言葉があります。
「ここは堅い場ですから」
大村なら堅い、戸田なら荒れる、平和島はインが飛ぶ。そう言われているのを何度も聞いてきましたが、自分で数えたことは一度もなく、聞くたびに頷いていました。
堅いとは、何のことなのか。数えられる形にするなら、3連単の1番人気がそのまま入ったレースがどれだけあったか、になります。人気は買う側が付けたものなので、結果と突き合わせれば記録に残る。
2016年9月1日から2026年9月1日まで、公式の払戻を1日ずつ集めました。3,653日、欠けた日はありません。数えられたのは534,330レースで、1番人気がそのまま入ったのは55,562回。
10.40%。1日12レースの場なら、1本と少しです。
3連単は120通りあるので、当てずっぽうに1つ選べば0.83%にしかならない。買う側は当てずっぽうより12倍うまく当てていて、その12倍で、ようやく10レースに1本強になる。
24場それぞれで数え直しました。分母は、各場20,290から23,476レース。
並べると、いちばん上に大村が、いちばん下に戸田が来る。10年数えて、言われている通り。これで終わりのつもりでした。
見ていたのは、上と下だけでした。図の真ん中に目を移すと、話が変わります。
芦屋の11.42%から多摩川の9.72%まで、18場が1.7ポイントの幅に詰まっている。12レースに直すと0.2本なので、この18場のあいだで1本ぶんの差がつくには、59レースかかる。朝から最終レースまで通って、5日。
1場あたり2万レース以上を数えても、2つの場の差が0.8ポイントより小さいと、偶然の揺れと見分けがつきません。18場の中で隣り合う場の差は、どれもその内側。
10年を2021年9月1日で前半と後半に割り、同じ場を、それぞれ約1万1千レースで数え直しました。
児島は、前半で7番目に堅い場でした。後半は19番目。同じ水面です。
真ん中の18場のうち、順位が5つ以上動いた場は9つ。上と下の6場は、どれも1つ以内しか動いていない。
約1万1千レースずつなら、偶然でも順位は少しは動くはず。では、どこまでが偶然なのか。
各場の開催日を、前半と後半のどちらに入れるかだけ入れ替えて、同じ数え方を1,000回やり直しました。偶然なら、5つ以上動く場は平均で3つ。1,000回のうち、9つ以上になったのは7回しかありません。
真ん中の場の堅さは、10年のあいだに本当に変わっていたことになる。びわこは前半の9.68%から後半の10.91%へ上がり、児島は11.00%から10.01%へ下がりました。
反対に、上と下の6場がそろって1つ以内に収まる形は、入れ替えた1,000回でも半分ほど出ています。離れた場所にいるので入れ替わりにくいだけで、動かなかったこと自体は、堅さの証拠になりません。真ん中にも、前後半とも5位のまま動かなかった下関がいます。
「堅い場」「荒れる場」と呼んでよいのは、10年のどちらの側でも端にいた6場まで、ということです。
場で分けるのをやめて、レース番号で切り直したらどうなるのか。1日の何本目か、というだけの切り方です。
3Rが8.80%で、11Rが11.71%。開きは2.91ポイントで、真ん中の18場の幅よりも、同じ日の3レース目と11レース目のほうが離れている。朝の2Rから4Rが谷になり、10Rから12Rが山になる形でした。場所を調べているつもりで、出てきたのは時間の話です。
では、この谷と山は、どの場で数えても同じ形なのか。24場それぞれで、10Rから12Rの的中率から、2Rから4Rの的中率を引きました。1場あたり、谷の側にも山の側にも5千レース前後が入ります。
後ろのレースのほうが、この比べ方で見分けられる大きさまで堅かったのは、18場。そのうち平和島は線のちょうど上にいて、線の引き方しだいで、どちら側にも入ります。戸田、鳴門、徳山、唐津の4場は、差が偶然の揺れの内側に収まっていて、どちらとも言えません。三国と芦屋は向きが逆で、朝の3レースのほうに1番人気がよく入る。芦屋では、その差が2.71ポイントありました。
場の話をやめて時間の話にしたつもりが、時間の話にも場が付いてきました。
この散らばりは、偶然でも出る程度なのか。同じ年の開催日を場のあいだで入れ替えて、1,000回数え直しました。偶然の散らばりは、いちばん大きい回でも実際の4割に届かず、実際に並んだ回は一度もない。全国で数えた形は10年のどの年でも山のほうが高いので、崩れていたのは年ではなく、場のほうです。
どの場で数えても同じ形だった、とは書けません。
1番人気が入ったとき、1着はどの艇だったのか。当たり前に見えて、数えていなかったことです。
| 1着の艇 | 1番人気が入ったとき | 全レース |
|---|---|---|
| 1号艇 | 88.55% | 54.60% |
| 2号艇 | 6.00% | 14.25% |
| 3号艇 | 2.98% | 12.35% |
| 4号艇 | 1.66% | 10.02% |
| 5号艇 | 0.45% | 5.63% |
| 6号艇 | 0.36% | 3.16% |
1番人気が入ったレースの9割近くは、1号艇が1着でした。全レースでの1号艇の1着は54.60%なので、34ポイント上に寄っている。「1番人気が来るかどうか」は、ほとんど「1号艇が来るかどうか」と同じことで、3連単の話をしているつもりが、ずっと1号艇の話をしていたわけです。
人気の話には、もうひとつ、よく聞く続きがあります。
「上位3つの人気で、半分は決まる」
本当に半分なのでしょうか。1番人気の10.40%に、2番人気の8.39%と3番人気の6.70%を足すと、25.5%。4回に3回は、4番人気より下が入っています。
半分を超えるのは、上から10通りを全部足したときで、53.6%。残りの半分は、11番人気から120番人気までの110通りに散っていました。
では、場ごとの堅さは、どこにも書かれていなかったのか。1番人気が入ったときの払戻を、場ごとに並べます。
| 場 | 1番人気の的中率 | 入ったときの平均配当 |
|---|---|---|
| 大村 | 12.72% | 644円 |
| 徳山 | 12.38% | 648円 |
| 芦屋 | 11.42% | 643円 |
| 津 | 11.37% | 685円 |
| 尼崎 | 11.34% | 706円 |
| 下関 | 11.29% | 695円 |
| 福岡 | 11.24% | 715円 |
| 住之江 | 10.89% | 715円 |
| 蒲郡 | 10.76% | 743円 |
| 唐津 | 10.70% | 701円 |
| 常滑 | 10.62% | 729円 |
| 宮島 | 10.61% | 720円 |
| 児島 | 10.51% | 725円 |
| 丸亀 | 10.41% | 716円 |
| 若松 | 10.31% | 699円 |
| びわこ | 10.29% | 754円 |
| 三国 | 10.20% | 685円 |
| 桐生 | 9.92% | 800円 |
| 浜名湖 | 9.75% | 784円 |
| 多摩川 | 9.72% | 802円 |
| 鳴門 | 8.86% | 802円 |
| 江戸川 | 8.11% | 955円 |
| 平和島 | 7.88% | 937円 |
| 戸田 | 7.78% | 963円 |
大村が644円で、戸田が963円。的中率の順位と配当の順位には、およそ−0.85の順位相関があり、当たりやすい場ほど安く、当たりにくい場ほど高い側に並びます。場ごとの堅さを買う側が知っていて、そのぶんオッズが動いている。
どの場が堅いかは、10年数える前から値段に書いてありました。先に値段を見ておけば、3,653日を数える手間は要りませんでした。
この数字から消えているのは、どのレースなのか。払戻の記録は557,172行。そのうち22,842行は数えていません。いちばん多いのは、返還があって人気の順位が出なかった15,461で、全体の2.8%。残りの7,381は、レース中止、3連単の不成立、同着などです。同着で組が2つ確定したレースは、どちらがどの順位かを分けられないので、10年の209レースを外しました。
水面の広さも、風も、番組の組み方も、この記事では数字にしていません。なぜ3Rが谷になるのか、なぜ三国と芦屋では朝のほうが堅いのか、なぜ大村と戸田が離れるのか。どれも、言えないままです。上下の6場と真ん中の18場を分けた線もこちらが引いたもので、線を動かせば場数は変わる。24場の数字は、すべて図と表に出してあります。
「堅い場」と「荒れる場」は、ありました。ただ、10年のどちらの側でも端にいたのは24場のうち6場で、残りの18場の堅さは、5年で入れ替わるほど動いている。同じ日の3レース目と11レース目の差は、その入れ替わりより大きい。
動かなかった6場の堅さは、10年前から払戻に書いてありました。
堅い場はある。
ただし、値札が付いている。
集計期間 2016/9/1 から 2026/9/1 / 3,653日・534,330レース
出典:公式サイト 払戻金一覧。この期間の数字は固定で、更新されません。